top of page

喉頭がんに対する当科で実施可能な放射線治療

①根治的放射線治療

  • 根治的放射線治療は、喉の摘出を行わないため、発声や嚥下機能を温存できる大きなメリットがあります。高い制御率が望める早期癌(T1-2)では主たる治療法です。

  • 進行癌では、発声や嚥下機能の温存を優先し手術療法をご希望されない場合や、全身状態や併存症により手術療法が困難な場合に行います。

  • 抗がん剤を同時に併用 (化学放射線療法) することで腫瘍を制御できる確率を高めます。

  • さらに、当科では、放射線治療の治療効果を高める目的で温熱療法(後述)の併用が可能です。

  • 患者さん一人ひとりのご希望や全身状態、併存症の有無などを基に、耳鼻咽喉科・頭頸部外科とのキャンサーボードを通じて治療方法を検討していきます。

  • 早期癌では放射線治療後の頸動脈の狭窄予防による脳血管疾患の発症リスクの軽減、進行癌では唾液腺の分泌量低下などの副作用リスクを軽減することが可能です。

②手術療法後の再発予防を目的とした放射線治療

  • 手術療法を行った後に再発リスクが高い場合に、放射線治療の追加が必要です。

  • 腫瘍の周囲への浸潤が強い場合、リンパ節転移が大きい場合や多発していた場合などが相当します。

  • 唾液腺の分泌量低下などの副作用の発症率を軽減できます。治療効果を高める目的で、抗がん剤を併用する場合があります。

 

③少数個の再発・転移に対する救済的放射線治療

  • 喉頭や頸部リンパ節の再発、また少数個(1~3個程度)の遠隔転移(オリゴ転移)を生じた場合に、薬物療法に加えて救済的な放射線治療を選択することが可能です。

  • 遠隔転移は、肺の転移、縦隔などのリンパ節転移、骨転移などが対象となります。

  • 過去に放射線治療が行われた喉頭や頸部リンパ節の再発では、摘出術が第一選択となります。

  • 摘出が困難な場合に、再度の放射線治療(再照射)が選択肢となります。

  • 再照射は、十分な量の放射線を投与できませんが、当院ではより腫瘍に対して高精度に放射線を集中させる強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いることや、温熱療法(後述)を併用することで、治療効果の改善を図っています。

 

④緩和的放射線治療

  • 他の臓器へ多数個の転移を生じている状況では、緩和的な放射線治療が適応となり得ます。

  • 腫瘍からの出血の止血、疼痛の鎮痛嚥下の改善、また骨転移に伴う疼痛の鎮痛や神経症状の改善といった症状緩和に有効性が高いです。

  • 緩和的放射線治療に必要となる放射線量は少ないため、治療に伴う副作用は軽微です。

  • 治療期間は2週間以内が多く、状況に応じて1~2日間の短期間の治療 (Quad Shot法など) も選択可能です。

  • 免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を高める目的でも、放射線治療を追加することがあります。

 

⑤温熱療法 (ハイパーサーミア)

  • 当科では、喉頭癌に対して放射線治療の治療効果を高める温熱療法を取り入れています。

  • 主に進行癌や再発癌を対象としています。がんの存在する領域の皮膚表面を2方向からパットで挟み込み高周波電流を流して加温します。

  • 1回の加温時間は40~60分程度で、週に1~2回、放射線治療を行っている期間中に総5回程度行います。

早期喉頭癌に対するVMATの線量分布図。

頸動脈の線量低減 (<30Gy)により晩期的な狭窄リスクを低減し、脳梗塞などの発症リスクを軽減します。
図3.png
bottom of page